福島隆史のCSRエピソード | 株式会社サステナビリティ会計事務所(SusA)

CSRコンサルタント福島隆史が、CSR報告書の読み方や考え方、 重要な用語の説明やエピソードを毎日更新します。 企業のCSRご担当者の方や、ステークホルダーの皆さまがCSR報告書について知見を深めていただければ幸いです。

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会社案内との合体は毒まんじゅう

   

CSR報告書作ったって誰も読んでくれない。
ところで、昔から制作している会社案内は、抽象的すぎるといわれている。
だったら、合体しちゃいましょう!
ってことで、合冊版を制作する傾向が最近増えています。

私も制作会社の代表をやっていますし、
お客さまからそういわれれば、
これから記述するメリットデメリットを伝えたうえで、
それでも合冊にされる、とおっしゃられれば「はい!」と請けて、
お客さまのニーズに応える報告書を制作しています。

でも・・、CSR領域に軸足をもっている者としては、
基軸が大きく揺らいでしまう、
辛い感覚を持ってしまっています。

会社案内の要素を、CSR報告書に入れてはいけない、
ってことではありません。
CSR報告書を読みこなす際には誰だって、
まずその会社ってどんな会社なのか、
どんな事業を営んでいるのか、知りたいものです。
今、各社から発行されているCSR報告書は、ほぼすべて、
会社情報、事業の状況を伝える要素が少なすぎる傾向があります。
だから会社案内要素を組み込むことは、
CSR報告書として歓迎すべきことです。

私が憂慮しているのは・・・、
合冊版を制作したことで、
単体としての会社案内の制作発行がなくなってしまうこと。
もちろん、合冊版にきりかえたほとんどの会社はそうされます。
だってそうしないと、コスト削減という目的が達成できませんから。
ゆえにこれまで会社案内を持参していた場面で、
CSR報告書を持っていくことになる。

たとえば営業行為の最初、
顧客の新規開拓を目指してご挨拶がわりに持参する資料として、
CSR報告書をもっていくことになる。

このCSRエピソードを一昨年から読んできていただいた皆さまであれば、
もう、お気づきのことと思います。

ネガティブ情報が、書き込めなくなります。

そんなことはない、書けるよ、とおっしゃる強がりなCSRご担当者の方は、
さすがにいらっしゃらないでしょう。

たとえば、工場の原材料、副資材や廃液を近くの川に事故で流しちゃって、
お魚ぷかぷか浮かせてしまいました、っていう事例から、
重大災害の発生、
景気低迷による早期退職の推進施策、etc・・
さぁ、書けますか?

従前の環境報告書になら、書けた。
単独のCSR報告書になら、
CSRとはなんたるかについて会社の上と交渉してなんとか書き込んだ。
・・・でも、ご挨拶がわりに使用するためのCSR報告書となった時点では、
やはり、書けませんよねぇ。。

冊子はダイジェスト版として制作して、そこには書かない、
webには、そういったネガティブ情報も含めて網羅的に掲載する、
という話も、現実既にチラホラ出てきています。
でもそれは本筋とはズレた対応策、でしょう。

もとい、会社案内との合冊を決めた担当者に、
なにも悪気はないのです。
担当者は、その会社の内部の方ですから、
どうしても無意識のうちに、
「わが社には今後悪いことは起きない」と思ってしまっている傾向がある。

しかたのないことです。
とがめられるようなことではありません。

でも残念なことに、悪いことは意外とすぐやってきます。

その時点では、
少し前の期に会社案内と合冊してしまったCSR報告書が、そこにある。
ネガティブ情報は到底掲載できない、ということを確認しあったあと、
次のことを改めて問い質すことになる。
CSR報告って、なんのためにあるのでしたっけ?

私は、会社が健全に成長していくためのツールとして、
まさに会社自身のためにCSR報告書ってあるんだと思っている。
そのために、ネガティブ情報も記載する。
ネガティブ情報を掲載しまくりたい、ってわけではもちろんないけれど、
掲載できるような環境は整備しておかなければならない。
そこってCSR報告書の、いわば魂の部分です。

ネガティブ情報の書けなくなったCSR報告書、
魂が抜き取られてしまったようなものです。
存在価値がなくなってしまったような気にすらなってしまう。

会社案内との合冊の決断は、
CSR領域に心ある者にとってはいわば、
毒まんじゅうを食べてしまうことと同じなのです。

 - ネガティブ情報開示

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