福島隆史のCSRエピソード | 株式会社サステナビリティ会計事務所(SusA)

CSRコンサルタント福島隆史が、CSR報告書の読み方や考え方、 重要な用語の説明やエピソードを毎日更新します。 企業のCSRご担当者の方や、ステークホルダーの皆さまがCSR報告書について知見を深めていただければ幸いです。

*

よいことをアピールしない

   

公正妥当な企業レポートであるための前提として、よい面も、悪い面も、バランス良く開示することが求められます。
これは、鉄則です。
ステークホルダーとして投資家を例にとると、投資判断においてミスリードさせるような開示は、本来、絶対に御法度なのです。

ところが、今の統合報告って、その前提すら守れていないように思える。
それってなぜか。

悪い面は、有価証券報告書などの法的な開示媒体に書かれている以上のこと、書けないからです。
もしくは、ニュースリリースで既発表のものしか、書けないからです。
しかも、そこからほぼ、丸写しでなければ社内が通さない。

一方で、よい面は、なに書いても社内で問題にならない。
価値創造のプロセスだと称して、ものすごいページ数を割いて、アピールが行われる。

結果として、、、ある悪い面が当期において取りざたされた企業の統合報告を見ても、
価値創造プロセスがでーんと載っていて、
知りたい悪い面の背景とか、そんなこと、記載されてはいない。
悪い面も含めての価値創造プロセスがねりあげられて記載されてる、なんてこともない。
一番後ろの財務セクションのリスク情報のところか、
コンプライアンスの章に、まるでコラム扱いのように、
他の開示媒体からの丸写し文章が載っているのみ、
となる。

そしてほんとに大きな悪いことが起こった際には、報告書の開示自体をやめてしまう。

そんな報告書、誰が見たいと思うのだろう。

このようなアンバランスを回避する唯一の方策はきっと、、
そもそもよい面を日頃から声高にアピールしておかないことだと思っています。

 - 統合報告書

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